軽い気持ちでくら寿司に行ってはいけない
いったいどういう仕組みかは知らないが、低価格高品質で寿司を提供してくれる「くら寿司」
筆者のような、従来寿司を口にする権利を有さない立場にある負け犬の口に寿司を流し込む貧困ビジネスといっても過言ではない。
ところで、くら寿司は、気軽に行ける回転ずしという大きな誤解が定着しているが、それは大きな間違いである。
低所得者にとって、くら寿司に行くというのは半年に一度あるかないかの特別な日であり、過酷な現実を生き抜く為の英気を養う重要な儀式なのだ。
想像してほしい。
エリートたちなら指先一つで一瞬で稼ぎ出すそれとはあまりにも異質な、汗と恥辱にまみれた数時間を耐え抜き手にしたシワシワの3000円を握りしめ、明日地球が滅亡すると錯覚しているかのように必死に寿司を詰め込む低所得者たち。
奴隷同然の日々に差し込んだ一瞬の快楽を貪る彼らの食事を誰も邪魔してはならない。
何も知らないくら寿司初心者が、彼らの気分を害することにならないために、くら寿司に行く際身に着けておきたい作法を記す。
入店から着席まで
まず知っておきたいのは、くら寿司は、家族連れだろうが友人連れだろうが一切の私語は厳禁である。
100円寿司の常連というのは、友人と家族という、人生におけるもっとも大きな2つの財産をどちらも手にすることができなかった者が多数を占めており、友人や家族と談笑する様が、彼らの劣情を煽り、味覚を奪ってしまうのだ。
席番号を取ったら、必ず水とおしぼりをとってから着席すること。
席に着いてから水とおしぼりを取りに行ってしまうのは、映画館で、クライマックスでトイレに行くのと同列の愚行であるためだ。
映画のクライマックスで、うろうろする人間が視界に入り集中力がそがれてしまう経験は誰にでもあるだろう。
くら寿司では、誰がいつクライマックス(最後の皿を一番好きなネタで締める)を迎えているかわからない事を考慮し、着席後は一切席を立ってはならない。
寿司を食す際の作法
着席後、座席表を、食事の邪魔にならないよう、また、会計の際にテーブルに忘れてドタバタしないように、箸入れのうえにそっと置き、目線を注文パネルに向ける。
ここは慎重に選びたい。
5皿食べるたびに、びっくらぽんの抽選音が、緊急事態と錯覚した脳が全身の筋肉を硬直させるほどの大音量で流れるため、初心者にはお勧めできない。
最初の1皿は、漬けマグロを注文する。
食べ終えた皿を、その後の寿司をスムーズに食すためのしょうゆ皿とするためだ。
一皿目に、しょうゆをかける必要があるものや、アナゴのようなタレがついているものを選んでしまうと、皿が不必要に汚れてしまい、美しくない。しょうゆをかける必要もなく、粘度の高いタレもついていない漬けマグロが最適解なのだ。
そして、くら寿司においてもっともギルティなのが、一皿ごとにしょうゆをかける行為だ。
しょうゆを必要以上に消費してしまうため、安く寿司を提供するためのコスト削減に神経をすり減らす、くら寿司の首を絞めることになるからである。これはもう、両親の首に手をかけるのと同義である。
2皿目も、漬けマグロを注文しなければならない。
着席前にとったおしぼりや、ポン酢や塩のポーション、エビのしっぽなどを置いておくための皿にするためだ。
こういったゴミをテーブルに直接置くのは不潔で、見るものを不快にするため避けなければならない。
ましてや、食べ終わった皿に張り付けて、そのまま皿の投入口に放り込むのはもってのほかだ。
投入口の下は、皿の洗浄層となっており、ここに異物を放り込んでしまえば、万が一のこともあり得る。(店舗が漫画みたいに爆発するなど)
それは、全国に無数に散らばるくら寿司ファンに対するジェノサイド(大量殺戮行為)につながるため、絶対にしてはならない。
このポジションを形成して初めて、好きな寿司を頼む権利を得る。
満足いくまで寿司を食べたら、今までしょうゆ皿として使っていたお皿を、長年寄り添った戦友のような愛着を感じながら、名残惜しみながら投入口に投入する。この時、使い切れなかったしょうゆやわさびが皿に残っているのはみっともないので、使い切れなかった場合、シャツの裾で拭ってでもきれいな身体で送ってやる。
画像のようなごちそうさまのポジションを正しくとれていることを確認してからお会計に移る。
おまけ くら寿司をおいしく食べるテクニック集
くら寿司が推奨する直前わさび。
これは、調理の手間を省略するためにマーケティング部門がはじき出した小賢しい言い訳ではない。
くら寿司のわさびは競合企業のそれと比べても明らかに美味く、これをまぐろにたっぷりつけて食べると明らかに美味い。
年に一度出るか出ないかのダブル明らかが出てしまうほど美味いのだ。
はま寿司のような、ポーションタイプのわさびでは、スーパーの寿司を食べている気になって興がそがれるが、くら寿司でその心配はない。
ピザのうまさの秘訣がチーズであるように、寿司のうまさの秘訣はわさびだったと気づかされるだろう。
オニオンサーモンなど、サラダ系のお寿司にはポン酢をかけると美味しい。
しめサバにガリをのせて食べると即席サバ棒寿司。
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