半年前、満開の桜が人々の新生活に彩りを添える春。
深夜、何気なく自分の頭頂部に触れたところ、まるで子犬のお腹を撫でたような頼りない感触に不安を覚え、写真を撮ってみたところ驚愕した。
「誰だこれ…?白髪染めに大成功したお爺ちゃん…?違う、俺だ…」
筆者の頭頂部は満開とは程遠い有様に。6分咲きほどになってしまっていた。
前々から薄毛が進行し始めていることには薄々感づいていたのだが、ここまでキているとは思わなかった。筆者は30歳男性。薄毛がこれほど進行してしまうのには心当たりが3つ。
1つは父だろうが祖父だろうが親戚中の男子が余すことなくハゲていること。
そして仕事柄、一日中帽子を被っていること。
そしてもう1つが…
イカれた蒸気機関車のごとく四六時中煙を吐き散らす愛煙家であることだ。1日一箱は必ず吸う。
薄毛が気になりだした頃、紙巻きたばこから電子タバコに変えたことで全て解決した気になっていた自分を嘲笑うかのように抜け落ちていく髪。その量は尋常ではなく、朝起きるたびに枕元でカラスが爆発したのかと思うほどの量であった。
早速最も効果的な育毛方法をネットで調べてみると、どのサイトにも共通して記述されていることは
- フェンぺシアとミノキシジルを服用する
- タバコは血流を悪くするので絶対にNG
この2点であった。
フィンペシアは男性ホルモンが抜け毛を促進する物質に変化してしまうのを防ぐ薬で、ミノキシジルは全身の血管を拡張して血流を良くする薬なのだが、血管収縮作用のあるタバコを吸ってしまうと、せっかくミノキシジルでこじ開けた血管をタバコでキュッと引き締めるという誰も得することのないコンボが完成してしまうとのことだった。
並みの喫煙者であれば当然タバコを止められるのだろうが筆者は違う。
以前タバコをやめようと尋ねた禁煙外来の医師曰く、筆者はニコチン以上に、タバコを吸うという行動そのものに依存してしまっているとのことなのだ。
気まずいときや緊張したとき、気分を紛らわすようにタバコを吸っていくうちに、タバコを吸わないと緊張するという地獄のパブロフの犬ような悲しきモンスターと化してしまったのだ。
とにかくタバコをやめる気もハゲる気もサラサラ無い筆者は、強気にもタバコを吸いながら育毛薬を服用するという人類史上稀に見る非常に豪胆な育毛に打って出たのであった。
ネットで購入したミノキ&フィンペ。ミノキシジルは、最初は5mmのものから始めて徐々に体を慣らしてから10mmに変更することが推奨されていたがそんな悠長なこと言ってられるかということで最初から10mm。もってくれよ、俺の血管!
バシャウマ流育毛術
フィンペシアとミノキシジルを寝起きに1錠
タバコ(アイコス)は1日一箱吸う
食事は特に気にしない
1ヶ月目
アディダスのロゴかと思った方、残念!筆者の頭頂部でした!
最初に比べてハゲが進行しているように見える。抜け毛の量も凄まじく、家中の抜け毛を一箇所に集めて球にしたらコストコのテディベアぐらいになったと言いたいところだがそれはさすがに嘘すぎるのでやめておこうくらいに思える程であった。
この抜け毛は「初期脱毛」と言われる現象で、フィンペシア&ミノキシジルを飲み始めた者全てに襲いかかる。育毛サイクルを正常に戻すための現象なのだが、半端な覚悟の挑戦者たちはここで振るい落とされ、金を払ってハゲを加速させただけという最悪の結末を迎えることになる。
また、やはりミノキシジルをいきなり10mmで始めたのが良くなかったのか、ちょっと不安になる程の動悸が一週間ほど続いた。
2ヶ月目
初期脱毛が落ち着いて、毛量も育毛スタート時と同じほどに。しかし、手で触ってみると心なしかチクチクとした希望に満ち溢れた感触を指先に感じるように。
この頃、街を歩いているとき、ふとショーウィンドウに映る自分と目が合いハッとした。いつかドキュメンタリー番組で観た、干ばつに立ち向かう農家と全く同じ目つきをしていたのだった。
頭皮以外にも異変が…
何毛といえばいいのかよくわからない毛が濃くなっていた。
ミノキシジルの育毛効果は頭頂部に限らず全身の体毛に作用する。
4〜5月目
筆者の頭皮の下に潜む何かが、猛烈な追い上げを開始し始めた。
頭頂部に、周りと比べると少し細いがそれでもしっかりと毛が生えてきた。
抜け毛の量が劇的に減り、洗髪時も指に絡まる毛の量が少なく精神的にもかなり安定してきた。
両肩がイングリッシュマフィンみたいになる程フケが酷かったため、シャンプーをネットでおすすめされていたコラージュフルフルに代えたところ、フケがビタッと止まり頭皮の赤みも収まった。
6ヶ月目
つむじ周りの毛質が外側の毛と同じくらいしっかりしてきた。
髪をかき分けても毛が抜けることはほとんど無く、頭蓋骨から生えているのでは?と感じるほどしっかりと毛穴が毛根に噛み付いている。
現在
気になって仕方がなかった頭皮の透け具合も大分緩和され、昔ハゲていたとは思わせない仕上がりになった。頭皮が透けるのを恐れ日差しを避け続ける吸血鬼のような性格だった半年前の姿はもう無い。
この半年間、タバコは1日一箱、食事も好きなだけ摂取し、特に健康を心がけた生活を送ったわけでも無く、ハゲた当時と全く変わらないライフスタイルを維持したにも関わらず毛が生えた。
結論 フィンペシア&ミノキシジルを半年飲み続けたら何をしてても毛が生えた
最後に、フィンペシアとミノキシジルの効き目には個人差があり発毛まで1年以上を要するケースもあるとのこと。それでも、リアップだのサクセスだのを頭に塗りたくったり、わかめを食べて溜飲を下げているよりも圧倒的に現実的な育毛法だと言える。
飲み始めた頃に大量の脱毛や動悸があったので、完全にノーリスクとは言えないが、どうしてもハゲゆく恐怖に耐えられなくなったときのために、これだけ劇的な育毛法があるよと覚えておくだけでも精神的にだいぶ楽になるだろう。
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